タイやベトナムのナンプラー、ニョクマム——魚を塩で発酵させた「魚醤」は、東南アジアの調味料という印象を持つ人が多いかもしれません。
けれど、日本にも古くから受け継がれてきた魚醤があります。そのひとつが、能登半島の先端で造られる「いしり」です。
日本三大魚醤のひとつ
いしりは、秋田の「しょっつる」、香川の「いかなご醤油」とともに、日本三大魚醤に数えられています。
地域によって「いしる」とも呼ばれ、奥能登の暮らしに深く根づいてきた発酵調味料です。同じ魚醤でも造り方は土地ごとに異なり、しょっつるが主にハタハタなどの魚を使うのに対し、いしりはイカの内臓を主原料にします。イカの町・能登ならではの、魚醤のかたちです。
穏やかな香りの奥に、驚くほど深い旨みがある。それが、いしりの持ち味です。
イカと塩だけ、2年の発酵
いしりの原料は、イカの内臓と塩だけです。
真冬の寒い時期に仕込み、能登の四季のなかで2年以上かけて、ゆっくりと発酵熟成させます。職人は何度もかき混ぜながら、原料が液体へと変わっていくのを待ちます。時間だけが造れる調味料、と言ってもいいでしょう。
長い発酵を経て生まれる液は、とろりと濃く、旨み成分をたっぷりと含みます。数滴を料理に加えるだけで、味の輪郭がくっきりと立ち上がります。
カネイシ 能登のいしり——イカ釣りの町・小木から
このいしりを造り続けているのが、能登町・小木のカネイシです。小木は古くからイカ釣りで知られる港町で、水揚げされたイカの恵みを余さず生かす知恵として、いしりづくりが続いてきました。
能登沖のイカの内臓と塩を、能登の気候のなかで2年以上熟成させた一本。香りは思いのほか穏やかで、旨みは深い。魚醤と聞いて身構える必要はありません。
いしりの使い方
- 能登流の「貝焼き」や「いしり鍋」に
- 刺身醤油に数滴混ぜて、旨みを底上げ
- チャーハン・パスタ・焼きそばの隠し味に
- 野菜の浅漬けの味付けに、ほんの少し
まずは、いつもの醤油に数滴足すところから。奥能登の2年分の時間が、料理の奥行きに変わります。
よくある質問
いしりとは何ですか?
石川県の能登地方に伝わる魚醤です。イカの内臓に塩を加え、2年以上かけて発酵熟成させて造ります。地域によっては「いしる」とも呼ばれます。魚介と塩を発酵させた、日本の伝統的なうま味調味料です。
いしりとしょっつるの違いは何ですか?
どちらも魚介を塩で発酵させた魚醤で、秋田のしょっつる、香川のいかなご醤油とともに日本三大魚醤に数えられます。違いは主に原料で、いしりはイカの内臓、しょっつるはハタハタなどの魚を使います。いしりはイカ由来の濃厚な旨みが持ち味とされています。
いしりはどう使えばいいですか?
能登では貝殻で煮る「貝焼き」や「いしり鍋」に使われます。家庭では、刺身醤油に数滴混ぜる、チャーハンやパスタの隠し味にするなど、少量から使うのがおすすめです。香りが穏やかなので、魚醤が初めての方にも扱いやすいとされています。
