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赤酒とみりんの違い——熊本だけに残った「灰持酒」の話

2026-07-20

みりんの棚の隣に、琥珀色の「赤酒」という瓶が並んでいたら——それは熊本の食文化が、あなたの台所に届く入り口かもしれません。

赤酒は、熊本県以外ではほとんど流通してこなかった伝統酒です。見た目も使い方もみりんに似ていますが、実は性質がまったく違います。料理に使ったときの照りとつや、素材のふっくらとした仕上がりから、全国の料理人が指名して取り寄せる理由も、この違いにあります。

違いの正体は「酸性かアルカリ性か」

みりんも清酒も、化学的には酸性です。酸は素材のたんぱく質を締める方向に働くため、煮魚や煮物に使うと、身に軽い張りが出ます。

一方、赤酒は木灰の働きによって弱アルカリ性という珍しい性質を持っています。酸性のみりんとは逆に、素材を締めずにふっくらと仕上げるのです。さらに豊富な糖分とアミノ酸が、みりん以上ともいわれる深い照りとつやを与えます。

だし巻き卵に少量加えると、冷めてもしっとりとやわらかいまま。料亭がわざわざ熊本から取り寄せる理由は、この一点に尽きるといえます。

なぜ弱アルカリ性なのか——「灰持酒」という古代製法

この違いを生んでいるのが、赤酒特有の造り方です。日本酒は通常、「火入れ」と呼ばれる加熱殺菌で保存性を高めます。この技術が広まる以前、酒を腐敗から守る手段のひとつが、もろみに木灰を加える方法でした。こうして造られる酒を「灰持酒(あくもちざけ)」と呼びます。

灰のアルカリ分が酸を中和し、雑菌の繁殖を抑える。冷蔵技術も殺菌技術もない時代の、理にかなった知恵です。灰持酒は年月とともに、糖とアミノ酸の反応でゆっくりと琥珀色に色づいていきます。この色こそが「赤酒」の名の由来です。

かつては各地にあった灰持酒ですが、火入れ技術の普及とともに姿を消していきました。そのなかで熊本では、肥後細川藩がこの酒を保護したこともあり、御国酒として飲み継がれてきたと伝えられています。今も熊本のお正月のお屠蘇は赤酒です。

細川藩の時代から続く蔵——瑞鷹の「東肥赤酒」

この赤酒文化を守り続けているのが、慶応3年(1867年)創業、熊本市川尻の酒蔵・瑞鷹です。

川尻は加藤清正の時代から続く港町で、船運とともに酒造りが栄えた土地。瑞鷹はこの地で150年以上、清酒とともに赤酒を造り続けてきました。「東肥赤酒(料理用)」は、その赤酒を料理向けに仕立てた一本。みりんの代わりにそのまま使える手軽さで、熊本の味を全国の台所に届けています。

熊本の人にとって赤酒は、お屠蘇であり、雑煮の味であり、正月の記憶そのものです。一本の瓶の向こうに、藩政時代から続く土地の時間が流れています。

赤酒の使い方——みりんとの置き換え方

まずは、いつもの照り焼きのみりんを赤酒に替えてみてください。仕上がりの違いが、熊本にこの酒が残り続けた理由を教えてくれます。

よくある質問

赤酒とみりんは何が違うのですか?

どちらも料理に甘みと照りを与えますが、性質が異なります。赤酒は木灰の働きで弱アルカリ性という珍しい性質を持ち、酸性のみりんや清酒と違って素材のたんぱく質を固くしにくいため、魚や肉がふっくら仕上がります。照りとつやの出方も豊かで、プロの料理人が取り寄せる理由になっています。

赤酒とはどんなお酒ですか?

熊本県に伝わる伝統酒で、火入れ(加熱殺菌)の代わりに木灰をもろみに加えて保存性を高める「灰持酒(あくもちざけ)」という古代製法で造られます。年月とともに琥珀色に色づくことから赤酒と呼ばれ、熊本では今もお正月のお屠蘇として飲まれています。

料理用の赤酒はどこで買えますか?

慶応3年(1867年)創業、熊本・川尻の酒蔵「瑞鷹」が料理用に仕立てた「東肥赤酒(料理用)」がAmazonなどで購入できます。1800ml入りで、みりんと同じ感覚で照り焼きや煮魚にそのまま使えます。

この記事で紹介した一本

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