スーパーの棚に並ぶ塩の裏面を見ると、「天日」「平釜」「せんごう」といった言葉が書かれています。同じ「海の塩」でも、造り方はさまざまです。
なかでも大きく分かれるのが、太陽と風で乾かす「天日塩」と、火で煮詰める「釜炊き塩」です。この違いを知ると、塩の選び方が少し変わってきます。
塩は「炊く」か「乾かす」か
海水から塩を取り出すには、水分を飛ばして塩の結晶を残す必要があります。その水分の飛ばし方に、二つの道があります。
ひとつは、平釜などで加熱して煮詰める方法。短い時間で安定して結晶が得られ、粒の形も整いやすいとされています。能登の揚げ浜式製塩のように、伝統的な釜炊きで丁寧に仕上げる塩も数多くあります。
もうひとつが、火を使わず太陽と風の力だけで乾かす方法です。時間はかかりますが、熱を加えないぶん、塩に含まれるミネラルの角が立ちにくいと言われています。
完全天日——火を一切使わない
天日を使う塩の中でも、濃縮から結晶まで一切火を使わないものは「完全天日塩」と呼ばれます。
ハウスや塩田に海水を張り、太陽と風にさらして少しずつ濃くし、やがて底に塩の結晶が育つのを待ちます。天候次第で、仕上がりまで数ヶ月かかることも珍しくありません。職人は毎日海水をかき混ぜ、結晶の育ち方を見守ります。塩を「炊く」のではなく「育てる」——そう表現される仕事です。
急がせない代わりに、生産量はごくわずか。手に入りにくいのは、この製法の必然でもあります。
土佐の海の天日塩 あまみ——黒潮町の手仕事
この完全天日製法を守るのが、高知県黒潮町の「土佐のあまみ屋」です。黒潮が最初にぶつかる土佐湾のほとりで、火を一切使わずに塩を造り続けています。
ハウスの中の結晶箱に海水を張り、太陽と風だけで数ヶ月かけて結晶させる。職人が毎日、木の棒で海水をかき混ぜながら育てた塩は、その名の通り、なめると塩けの奥にほのかな甘みが広がります。太陽の恵みをそのまま閉じ込めた、土佐の宝物です。
天日塩の楽しみ方
- まずは塩むすびで。米の甘みと塩の甘みの重なりが分かります
- トマトやきゅうりなど、生野菜にひとつまみ
- 焼き魚の振り塩、天ぷらの付け塩に
- 肉の下味に。粒がやや粗いものは仕上げの一振りにも向きます
同じ海の塩でも、造り方でこれほど表情が変わります。いつもの塩を一度替えてみると、シンプルな料理ほど違いがはっきりと現れます。
よくある質問
天日塩と釜炊き塩は何が違うのですか?
大きな違いは、海水を結晶させるときに火を使うかどうかです。天日塩は太陽と風の力だけで、数ヶ月かけて水分を蒸発させます。釜炊き塩は平釜などで加熱して煮詰めます。一般に、天日塩はミネラルが穏やかに残り、角のないまろやかな味になるとされています。
完全天日塩とは何ですか?
海水の濃縮から結晶づくりまで、すべての工程で火をまったく使わない塩のことです。太陽と風だけが頼りのため天候に左右され、完成まで数ヶ月かかることもあります。手間がかかり生産量も限られるため、希少な塩とされています。
天日塩はどんな料理に向いていますか?
塩そのものの味が出やすいので、塩むすびや生野菜、焼き魚など、素材を活かすシンプルな料理でまず試すのがおすすめです。仕上げにひとつまみ振る使い方でも、味わいの違いが分かりやすくなります。
