「黒酢」という名前は知っていても、ふつうの米酢と何が違うのかと問われると、答えに迷う方は多いかもしれません。色が濃いだけの酢、と思われがちですが、その琥珀色には理由があります。
違いを生むのは、造り方と、かける時間です。なかでも鹿児島・福山に伝わる「壺造り」は、世界的にも珍しい方法として知られています。
壺のなかで一年——福山の壺畑
錦江湾を望む鹿児島・福山町では、江戸時代後期から独特の酢づくりが続いてきました。屋外に「アマン壺」と呼ばれる陶器の壺を並べ、そのなかで米と米麹と地下水だけを使って酢を醸すのです。
ずらりと壺が並ぶ景色は「壺畑(つぼばたけ)」と呼ばれ、福山の風物詩になっています。ひとつの壺のなかで、糖化・アルコール発酵・酢酸発酵という複数の工程が同時に進んでいくのが、この製法の特徴です。
温暖な福山の気候だからこそ、屋外での長期発酵が成り立ちます。土地の風土そのものが、造り手のひとりだと言えます。
琥珀色になる理由
黒酢が濃い色をまとうのは、一年以上という長い熟成のあいだに、アミノ酸と糖がゆっくりと反応していくためだとされています。
同時に、この熟成が味わいも変えます。仕込んで間もない酢のツンとした鋭さは影をひそめ、まろやかでコクのある味に育っていきます。アミノ酸が豊かなため、酸っぱさの奥に深みが感じられるのも、長期熟成の黒酢ならではです。
坂元のくろず 天寿——福山の壺畑から
この壺造りを守り続けているのが、福山の坂元醸造です。「坂元のくろず 天寿」は、屋外の壺で一年以上かけて発酵・熟成させた、琥珀色の黒酢になります。
米と米麹、そして地下水。原料はいたってシンプルですが、時間と自然の力が、そこに深い味わいを与えます。急がず、待つ。壺畑の一滴には、その姿勢がそのまま映し出されています。
黒酢の楽しみ方
- 水・お湯・炭酸で5〜7倍に割って、毎日の一杯に
- 酢豚や南蛮漬けに使うと、酸味がまろやかにまとまります
- 油と合わせてドレッシングに
- はちみつと合わせれば、飲みやすいドリンクに
まずは薄めて飲んでみると、ふつうの酢との違いがはっきりと分かります。壺のなかで過ごした一年の時間を、そのまま味わえる一滴です。
よくある質問
黒酢はふつうの米酢と何が違うのですか?
大きな違いは、熟成にかける時間です。一般的な米酢が短期間で仕上がるのに対し、鹿児島・福山の黒酢は屋外の壺のなかで一年以上かけて発酵・熟成させます。長い熟成のあいだにアミノ酸などが豊かになり、色は琥珀色に、味は角のないまろやかなものになるとされています。
壺畑(つぼばたけ)とは何ですか?
屋外に「アマン壺」と呼ばれる陶器の壺をずらりと並べ、そのなかで酢を醸す鹿児島・福山町独特の景観のことです。ひとつひとつの壺で、米と米麹と地下水だけを使い、太陽の熱を借りながらゆっくりと発酵させます。世界的にも珍しい露天の壺仕込みです。
黒酢はどのように使えばいいですか?
水やお湯、炭酸で5〜7倍に割れば毎日の一杯になります。料理では酢豚や南蛮漬け、ドレッシングに使うと、角のないまろやかな酸味が全体をまとめます。酸味がやわらかいので、はちみつと合わせて飲む使い方もおすすめです。
