Story

あごだしとは?——山陰と九州が愛する「飛魚」の上品なだしの世界

2026-07-19

「あごだし」の「あご」が何の魚か、すぐに答えられる人は、西日本以外では意外と少ないと思います。

答えは、飛魚(とびうお)。海面を飛ぶように滑空するあの魚を、山陰や九州では「あご」と呼びます。名前の由来は「あごが落ちるほど旨いから」など諸説ありますが、その呼び名のとおり、だしの世界では別格の存在として扱われてきました。

なぜ「焼きあご」にするのか

あごだしの主流は、飛魚を素干しではなく、焼いてから干した「焼きあご」です。

飛魚は長距離を飛ぶために筋肉質で、脂肪が少ない魚です。脂が少ないことは、だしにとって大きな長所になります。煮出しても濁りや魚臭さが出にくく、澄んだ上品な旨みだけが引き出せるのです。さらに焼く工程を挟むことで水分と余分な脂が抜け、香ばしさが加わり、保存性も高まります。

日本海に面した山陰と、東シナ海に開けた九州北部。飛魚の回遊路にあたるこの二つの地域で、焼きあごはだし文化の主役になりました。九州では、正月の雑煮のだしといえば焼きあご、という家庭も多いとされています。

かつおだしとの違い

かつおだしが「香りとコクの王道」だとすれば、あごだしは「澄んだ余韻」です。

脂の少ない魚ならではの、雑味のないすっきりとした旨み。だしそのものの味を主役にしたい、すまし汁・うどんつゆ・茶碗蒸しのような料理で、あごだしは真価を発揮します。逆に言えば、味噌や醤油の強い料理ではかつおだし、繊細な料理ではあごだし、という使い分けができます。

境港と福岡、ふたつの定番

家庭であごだしを使うなら、だしパックが入り口になります。

港町・境港(鳥取県)のヘイセイが作る「あご入り鰹ふりだし」は、焼きあごに本枯れ鰹節・利尻昆布・椎茸を合わせたティーバッグ型。山陰土産の定番として長く愛されてきたロングセラーです。

もうひとつが、福岡・久山の久原本家「茅乃舎だし」。明治26年(1893年)創業の醤油蔵を原点とする蔵元が2005年に世に出し、全国に「だしブーム」を起こした立役者です。焼きあご・かつお節・うるめいわし・真昆布を配合し、化学調味料・保存料は使っていません。

あごだしの楽しみ方

はじめの一杯は、具の少ない味噌汁がおすすめです。だしが澄むと、食卓の解像度が一段上がります。

よくある質問

あごだしの「あご」とは何ですか?

飛魚(とびうお)のことです。山陰や九州では飛魚を「あご」と呼びます。名前の由来は「あごが落ちるほど旨いから」など諸説あります。初夏から秋にかけて日本海や東シナ海を回遊する魚で、脂が少なく上品なだしがとれます。

あごだしとかつおだしの違いは何ですか?

かつおだしが香りとコクの強い王道のだしなのに対し、あごだしは脂の少ない飛魚からとるため、雑味のない澄んだ上品な旨みが特徴です。焼いてから干す「焼きあご」を使うことが多く、香ばしさもまといます。すまし汁やうどんつゆなど、だしの味を主役にしたい料理に向きます。

あごだしはどうやって使えばいいですか?

だしパック入りの商品なら、水から入れて3〜4分煮出すだけです。境港のヘイセイ「あご入り鰹ふりだし」や福岡の「茅乃舎だし」が定番で、いずれもAmazonなどの通販で購入できます。味噌汁・うどん・炊き込みご飯・茶碗蒸しに幅広く使えます。

この記事で紹介した一本

※ 本ページにはアフィリエイト広告が含まれます(PR)