塩麹をつくろうとレシピを開くと、材料に「米麹」とあります。ところが店で探すと、袋に入って常温の棚に並ぶものと、冷蔵ケースに入っているものの2種類が出てきます。前者が乾燥麹、後者が生麹です。
同じ「米麹」でも、扱い方も仕上がりも少し違います。
水分が抜けているか、いないか
違いはシンプルで、麹を乾燥させてあるかどうかです。
生麹は、蒸した米に麹菌を繁殖させたあと、乾燥させずにそのまま袋詰めしたもの。水分を含んでいるため日持ちせず、冷蔵か冷凍での保存が前提になります。そのぶん麹の香りが強く、甘みの出方も素直です。
乾燥麹は、その生麹を低温で乾かして水分を飛ばしたもの。常温で数か月置けるので扱いやすく、必要なときに必要なだけ使えます。ただし乾いているぶん、仕込むときに水を吸わせる工程が要ります。生麹のレシピをそのまま使うと水分が足りなくなるため、重量を1割ほど減らして水を足すなどの調整が必要です。
どちらが上ということではなく、頻度の問題です。毎週少しずつ使うなら乾燥麹、味噌や甘酒を季節ごとにまとめて仕込むなら生麹が扱いやすくなります。
麹の、さらに上流にある仕事
ここで一段さかのぼると、「種麹屋(たねこうじや)」という商いに行き着きます。
麹をつくるには、米に付ける麹菌そのものが必要です。その麹菌を育てて、味噌屋・醤油屋・酒蔵に供給するのが種麹屋の仕事。日本の発酵食品のほとんどが、この十数軒しか残っていないとされる業種の上流にぶら下がっています。普段は名前の出ない、けれど欠かせない位置です。
石黒種麹店の生こうじ——南砺・福光
富山県南砺市福光の石黒種麹店は、北陸で唯一の種麹屋です。江戸の文政年間から家業として麹を作り、種麹屋としての創業は明治28年(1895年)。
この店の生こうじは、創業当時から続く「こうじ蓋製法」で育てられています。機械の大きな箱ではなく、小さな木の蓋に麹を分け、手で温度を見ながら仕上げる方法です。この製法の麹は一般的な麹より酵素の量が多く、力が強いことが公的機関の調べで確認されています。
米は富山県産コシヒカリの一等米。米の一粒一粒に麹菌が入るため、見た目は雪のように白く、自然な甘みがあります。添加物は入っていません。生の麹なので、届いたら冷蔵で保存します。
生麹の使い方
- 塩麹に仕込む(麹・塩・水を合わせて常温で1週間ほど)
- 甘酒を仕込む(米麹と水を60℃前後で保温)
- 鶏や豚を漬けて焼く下味に(麹の酵素で身がやわらかくなる)
- 手前味噌の仕込みに
- 三五八(塩三・麹五・米八)のような漬け床に応用する
福島に伝わる「三五八」のように、麹を漬け床として使う文化も各地に残っています。まずは塩麹をひと瓶。麹の力が実感できる、いちばん短い入口です。
よくある質問
生麹と乾燥麹はどちらを選べばよいですか?
香りと甘みの立ち方を重視するなら生麹、保存のしやすさを重視するなら乾燥麹が向きます。生麹は水分を含んだままの麹で冷蔵・冷凍保存が前提、乾燥麹は常温で長く置ける代わりに、仕込む前に水を吸わせる工程が必要になります。日常的に使うなら乾燥麹、季節ごとにまとめて仕込むなら生麹という選び方もできます。
乾燥麹を生麹のレシピで使うときは、量をどう変えますか?
乾燥麹は水分が抜けているぶん、同じ重量なら生麹より麹そのものの量が多くなります。生麹のレシピを乾燥麹に置き換える場合は、乾燥麹の重量を1割ほど減らし、その分の水を足す方法が一般的です。ただし製品ごとに水分量が異なるため、パッケージの表示があればそちらを優先してください。
「種麹屋」とは何をするお店ですか?
麹をつくるための麹菌そのもの(種麹)を育てて、味噌屋・醤油屋・酒蔵などに供給する専門店です。全国に十数軒ほどしか残っていないとされる希少な業種で、日本の発酵食品づくりの上流にあたります。石黒種麹店は北陸で唯一の種麹屋として知られています。

