コップに注ぐと、水にしか見えません。ところが口に入れると、たしかに醤油の味がする。熊本のフンドーダイが世に出した「透明醤油」は、初めて見た人がほぼ必ず二度見する一本です。
見た目の意外さで話題になりましたが、これは奇をてらった商品ではありません。日本の醤油が長く抱えてきた「色」という課題の、ひとつの答えです。
醤油の色は、どこから来るのか
そもそも醤油はなぜ茶色いのでしょうか。
色は原料に元から付いているものではありません。大豆と小麦を仕込み、熟成させていく過程で、糖とアミノ酸が反応して褐色の色素が生まれます。熟成の期間が長いほど、温度が高いほど、色は濃くなっていきます。つまり醤油の色は、旨みが育った時間の記録でもあるわけです。
ところがこの色が、料理の側では邪魔になることがあります。白身魚の刺身、だしの澄んだ吸い物、卵の黄身、炊きたての白いご飯。素材の色をそのまま見せたい料理に、茶色い液体をかけると、皿の印象が変わってしまいます。
「色を残す」という日本の工夫
この問題に対して、日本の醤油づくりは古くから工夫を重ねてきました。
関西で発達した淡口(うすくち)醤油は、仕込みや熟成の条件を変えて色の生成を抑えた醤油です。色が薄いぶん、素材の色と香りを立てられます。誤解されやすいのですが、淡口は「薄味の醤油」ではなく、塩分はむしろ濃口よりやや高めです。兵庫・龍野の末廣醤油のような蔵が、この技術を受け継いできました。
さらに色を抑える方向に進んだのが白醤油であり、それにだしを合わせたのが白だしです。透明醤油は、この「色を残す」という系譜の、いちばん先端にある一本と捉えると位置づけがはっきりします。
フンドーダイの透明醤油——明治2年、熊本の蔵から
透明醤油を手がけるフンドーダイは、明治2年(1869年)創業の熊本の醤油メーカーです。
色をほとんど持たない状態に仕上げることで、素材の色を変えずに、旨みと塩気だけを足せる。名前のインパクトが先に立ちますが、使いどころは明快です。100mlの小瓶で、食卓に置いて使う設計になっています。
透明醤油の使い方
- 白身魚の刺身に(身の色が濁らない)
- 卵かけご飯に(黄身の色がそのまま残る)
- 冷奴・湯豆腐に、豆腐の白さを保ったまま
- だしの澄んだ吸い物やあんかけの味付けに
- 色を付けたくない浅漬けやドレッシングに
普段の醤油を置き換えるものではなく、色を見せたい場面で持ち出す一本です。まずは卵かけご飯で、色の残り方を確かめてみてください。
よくある質問
透明醤油とはどんな醤油ですか?
醤油の旨みと塩気を持ちながら、色をほとんど持たない醤油です。熊本のフンドーダイ(明治2年創業)が世に出しました。刺身や卵料理、冷奴など、皿の上の色を変えたくない料理に向きます。
醤油の色はどこから来るのですか?
仕込みと熟成の過程で、大豆や小麦に由来する糖とアミノ酸が反応して褐色の色素が生まれます。熟成が長く温度が高いほど色は濃くなるため、色を抑えたい淡口醤油では熟成の条件や仕込み方を変えて色の生成を抑えています。
淡口醤油や白だしとは何が違いますか?
いずれも「色を抑える」という発想は同じですが、程度と役割が違います。淡口醤油は色を抑えた醤油そのもので塩分はやや高め、白だしは白醤油や淡口にだしを合わせた調味料です。透明醤油はその延長線上で、色をほぼゼロにまで持っていったものと捉えると位置づけが分かります。

