まずはこの2本


秋になると河原に鍋を出し、里芋を煮る。山形の芋煮会は家庭や職場の年中行事として続いています。内陸は醤油と牛肉、庄内は味噌と豚肉と、県内でも味付けが分かれます。
鍋の味を一本で決めたいという要求は、だし入り醤油を常備品にしました。米沢にはたれの文化もあり、肉を焼いて絡める味付けが日常に根づいています。大勢で囲む鍋が、調味料の形を決めてきた土地です。
- 内陸は醤油と牛、庄内は味噌と豚。二つある芋煮会
- 鍋の味を一本で決めるだし入り醤油
山形の醤油はなぜだしが入っているのか
山形の家庭で最初に開かれる一本は、だしの入った醤油です。県を代表する「味マルジュウ」は、本醸造の醤油にかつお節などのだしを合わせただし入り醤油で、地元では『マルジュウの味=実家の味』と言われるほど広く使われているとされます。
この一本で味が決まるのは、山形の食卓に鍋や煮物が多いからです。芋煮会に代表されるように、大人数で囲む鍋を短い時間で仕上げたい。だしを別に取らず、醤油と一緒に鍋へ入れられる形が便利でした。だしのうま味と醤油の塩味が最初から釣り合っているため、口に含むとほのかに甘みを感じる仕上がりになります。
米沢の万能たれ「うまいたれ」も、醤油にかつおだしを効かせた甘辛い味です。だしと醤油をひとつにしたつゆの文化が、山形の家庭料理を長く支えてきました。
紅花商人が育てた、山形の醸造文化
山形は江戸時代、最上紅花の一大産地でした。染料として京や大坂で高値で取引された紅花は、最上川を下って酒田から北前船で運ばれ、山形に豪商を生んだと伝わります。
その紅花商人のひとりが、天保15年(1844年)に山形城下で創業した丸十大屋です。紅花取引で築かれた商人町の資本が、醤油や味噌といった醸造業の広がりを支えたとされます。米沢でも、上杉の城下町を背景に古くから醤油・味噌が造られてきました。
醤油発祥の地は諸説あり、山形が醤油発祥の土地というわけではありません。ただし、日本海側の物流と内陸盆地の商業が結びついたこの土地では、家庭料理に根づく醸造の文化が独自の形で育ってきました。だし入り醤油や万能たれが今も暮らしの中心にあるのは、その延長線上にあります。
郷土料理と調味料
- 芋煮
- 秋の河原で鍋を囲む芋煮会は、山形の年中行事です。内陸の村山地方は牛肉と醤油、庄内は豚肉と味噌で仕立てるのが定番で、県内で味付けがはっきり分かれます。醤油仕立てにはだし入り醤油が使われることが多く、鍋の味を一本で決められます。
- だし
- きゅうり・なす・みょうが・大葉などを細かく刻み、醤油や出汁で和える夏の家庭料理です。炊きたてのご飯や冷奴にのせて食べます。夏バテで食が細る時期に、香味野菜と醤油で箸を進める知恵とされます。
- 玉こんにゃく
- 球状のこんにゃくを、醤油ベースの汁でじっくり煮た郷土食です。串に刺してからしを添えるのが定番で、山形の観光地や祭りでよく売られています。
山形県の蔵元・醸造元
- 丸十大屋天保15年創業
山形城下で紅花商人として創業した醸造元です。だし入り醤油「味マルジュウ」は、芋煮の味を決める県民の常備品として知られています。 - 平山孫兵衞商店
米沢で醤油や味噌を手がけてきた醸造元です。だしを効かせた甘辛い万能たれ「うまいたれ」は、米沢の家庭料理を長く支えてきました。
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