まずはこの2本


奈良は清酒の発祥地とされる土地です。寺で造られた酒の技術が各地へ広がったと伝えられています。
酒を造れば酒粕が出ます。それを漬け床に使ったのが奈良漬です。瓜や胡瓜を何度も漬け替え、飴色になるまで寝かせる。副産物を捨てずに次の味へ渡す考え方が、この土地の食を形づくってきました。三輪の素麺のように、寝かせるほど良いとされる食べものもあります。
- 清酒発祥の地と、酒粕を使う奈良漬
- 寝かせるほど良しとする素麺の考え方
奈良の醤油はなぜ深く、まろやかなのか
奈良の醤油は「長く寝かせる」という一点に特徴があります。都の置かれた古い土地柄もあって、時間をかけて仕上げる造り方が今も残っています。
奈良町の南、京終(きょうばて)の井上本店は元治元年(1864年)の創業。国産丸大豆・国産小麦・天日塩を使い、蔵でおよそ2年の天然醸造を続けています。原料処理から瓶詰めまで自社で行う、いまや希少な一貫醸造の蔵です。数ヶ月で仕上げる大量生産品と違い、二年を経た醤油は角の立った塩味が丸くなり、熟成香とほのかな甘みが立つとされています。
奈良は醤油の祖先とされる「醤(ひしお)」のふるさとでもあります。急がずに寝かせる造りは、この土地の時間感覚と重なります。
奈良と、醤油の源流「醤(ひしお)」
醤油の直接の発祥地は和歌山県の湯浅など諸説あり、奈良県を醤油発祥地と断定する記録はありません。ただし、その源流にあたる「醤(ひしお)」の文化は、都のあった奈良と深く結びついてきたと伝えられます。
古代の律令制の下では、大豆・米・麦・魚などを塩とともに漬け込んで発酵させる「醤」がつくられ、宮中の食を支えました。平城京跡からは、醤に関わる木簡も出土しています。醤はやがて味噌や溜まり、そして醤油へと枝分かれしていく、遠い祖先にあたる調味料です。
奈良で今も続く蔵の一つ、井上本店が「醤のふるさと」を掲げて醸造を守っているのも、この背景があるからです。
郷土料理と調味料
- 奈良漬
- 白瓜や胡瓜、西瓜などを塩漬けにしたあと、酒粕に何度も漬け替えて熟成させる粕漬けです。飴色になるまで数年寝かせるものもあります。奈良に清酒造りの伝統があり、酒粕が豊富に得られたことが背景にあるとされ、江戸時代に「奈良漬」の名で全国へ広まったと伝えられます。
- 茶がゆ
- ほうじ茶や番茶で米をさらりと炊く粥です。奈良では朝食として長く親しまれ、東大寺の修二会でも食されると伝えられます。醤油や漬物、佃煮といった塩気の強い副菜と合わせるのが定番で、湯浅系や奈良の淡めの醤油が茶の香りを消さずに寄り添います。
- 三輪素麺
- 桜井市三輪を発祥とされる手延べ素麺です。冬場に細く延ばした麺を寝かせて熟成させ、梅雨を越したものを「ひね」、二夏越したものを「大古(おおひね)」と呼びます。寝かせるほど腰が強くなり、だしの利いた淡口のつゆで食べるのが土地の食べ方です。
奈良県の蔵元・醸造元
- 井上本店元治元年創業
奈良町の南・京終で、明治期のレンガ蔵とともに醤油を醸してきた蔵です。国産丸大豆と国産小麦、天日塩を用い、原料処理から瓶詰めまで全工程を自社で行う一貫醸造を続けています。蔵で約2年の天然醸造を経た濃口醤油や、淡口を土台にした八方だしなどを手がけています。


