まずはこの2本


焼津は日本有数のかつお節の産地です。なかでも本枯節は、荒節にカビを繰り返し付けて乾燥させ、数か月かけて仕上げます。カビが余分な水分と脂を抜くことで、澄んだ香りのだしが引けるようになります。
海から山へ入ると、今度はわさびです。静岡は水わさび栽培の発祥地とされ、湧き水を段々に流す独特の栽培法が受け継がれてきました。この伝統的なわさび栽培は、二〇一八年に世界農業遺産に認定されています。
- カビ付けを繰り返す数か月の仕事、焼津の本枯節
- 世界農業遺産に認定された水わさびの伝統栽培
静岡の味を作る本枯節と水わさび
静岡の調味料に共通するのは、雑味の少ない澄んだ風味です。焼津の本枯節は、荒節にカビ付けと天日干しを繰り返して余分な水分と脂を抜き、香りと旨みだけを残していきます。ここから引くだしは濁らず、色も薄く、料理の輪郭を消しません。京料理で色を出したくないときに本枯節が選ばれてきたのも、この澄んだ性格からです。
山あいのわさびも同じ性格を持ちます。伊豆や安倍川の上流では、湧き水を段々の「畳石」に流して育てる方式が受け継がれてきました。清冽な水で育つため、辛みの奥に甘みと香りが残るとされます。海の節と山のわさび。どちらも「余分を落として香りを残す」ことを共通の物差しにしている調味料です。
焼津のかつお節と、水わさびの発祥
焼津のかつお節づくりは、江戸期に紀州(現在の和歌山県)から燻して乾かす技術が伝わったのが始まりとされます。駿河湾はカツオがよく揚がる海で、そこにカビを付けて熟成させる工夫が重なり、本枯節の産地として定着しました。
わさびの栽培は、駿河国有東木(現在の静岡市葵区有東木)で慶長年間(1596〜1615年)に始まったと伝えられ、徳川家康に献上されたという逸話が残ります。発祥の時期や経緯には複数の伝承があり、正確な年は特定されていません。湧き水を段々の「畳石」に流す独特の栽培法は、「静岡水わさびの伝統栽培」として2018年に世界農業遺産(GIAHS)に認定されました。海の本枯節と山の水わさび。静岡の二つの看板は、どちらも江戸から続く仕事の積み重ねの上にあります。
郷土料理と調味料
- 静岡おでん
- 牛すじや鶏がらで取った黒いつゆに、黒はんぺんや練り物などを串に刺して長く煮込みます。食べる直前にだし粉(削り節や青魚を粉にしたもの)と青のりをふるのが特徴で、濃口の醤油だしと魚粉の香りで仕立てるのが静岡流です。
- 桜えびのかき揚げ
- 駿河湾の由比・蒲原は国内で唯一の桜えび漁の港です。生の桜えびを衣で軽く揚げ、塩や天つゆで食べます。素材の香りを立たせるため、味付けは控えめに仕立てるのが基本です。
- とろろ汁
- 東海道丸子宿の名物として江戸期から続く料理です。自然薯をすりおろし、味噌仕立てのだしでのばしたものを麦飯にかけます。だしと味噌の合わせ具合で家ごとの味が決まります。
静岡県の蔵元・醸造元
- ちきり清水商店天明2年創業
焼津で本枯節を造り続ける蔵です。荒節にカビ付けと天日干しを繰り返し、半年ほどかけて熟成させる伝統的な製法を今も守っています。 - 田丸屋本店
静岡で本わさびを扱う老舗です。清流で育った水わさびを原料に、香りと辛みを活かした加工品を手がけています。



