まずはこの2本


たつのは淡口醤油の産地です。揖保川の軟水、赤穂の塩、播州平野の大豆と小麦。素材のそろったこの地で、色と香りを抑えた醤油が生まれました。
淡口は薄味の醤油ではありません。色を薄く仕上げるぶん塩分はむしろ高く、素材の色と香りを消さないために使われます。関西の吸い物や炊き合わせが澄んだ見た目になるのは、この醤油があるからです。
- 揖保川の軟水と赤穂の塩が生んだ淡口醤油
- 薄味ではなく、素材を消さないための醤油
龍野の淡口醤油はなぜ甘く感じるのか
淡口醤油の産地・龍野には、仕込みの終盤に甘酒を加える伝統的な製法があります。米麹からつくる甘酒のやわらかな甘みが入ることで塩気の角がとれ、色もそれ以上濃くならないよう抑えられます。塩分は濃口醤油より高いのに、口に含むと甘みや旨みが先に立って感じられるのは、この一手間があるからだといわれます。
加えて、播州平野で採れる米と小麦、揖保川の鉄分が少ない軟水、赤穂の塩。素材の条件がそろった土地で、色をあえて淡く仕上げる醤油が根づきました。淡口は「薄味の醤油」ではなく、素材の色と香りを消さないための道具です。関西の吸い物や炊き合わせが澄んだ見た目のまま仕上がるのは、この一本があるからです。
淡口醤油はどこで生まれたか
淡口醤油は江戸時代前期、播磨国龍野(現在のたつの市)で生まれたと伝えられます。寛文6年(1666年)、龍野の醸造家・圓尾孫右衛門が色を淡く仕上げる醤油を工夫したのが始まりとされ、以来たつのは淡口の主産地であり続けています。
背景には、この土地の素材の条件がありました。播州平野の米と小麦、揖保川の鉄分の少ない軟水、そして赤穂の塩。原料と水の性格が、色の淡さと甘みの利いた味わいを可能にしたと考えられています。京都・大阪をはじめとする上方の食文化が広がるにつれ、素材の色を濁らせない龍野の淡口は、吸い物や炊き合わせに欠かせない醤油として定着していきました。
郷土料理と調味料
- いかなごのくぎ煮
- 春に瀬戸内で獲れる幼魚のいかなごを、醤油・砂糖・生姜で煮詰めた佃煮です。仕上がりが古釘のように見えることからこの名がつきました。神戸・明石を中心に、家々で炊いてご近所や親戚に配り合う、春の風物詩として親しまれています。
- 明石焼き(玉子焼き)
- 鶏卵と浮粉を多めに溶いた生地でタコを包み、銅板で焼いて温かいだしにつけて食べます。だしは淡口醤油仕立てが多く、ソースをかけないのが本場のかたちです。関西の淡口文化がそのまま味付けに出た料理といえます。
- ぼたん鍋
- 丹波篠山を中心に食べられてきた猪肉の味噌鍋です。花のように盛りつけた猪肉を、味噌仕立ての汁で野菜と一緒に炊いて食べます。冷え込みの強い丹波の冬を象徴する郷土料理として知られています。
兵庫県の蔵元・醸造元
- 末廣醤油明治12年創業
淡口発祥の地・たつので天然醸造を続ける小さな蔵です。国産丸大豆と国産小麦を用い、四季の気温に任せてじっくり熟成させる造り方を守っています。 - 六甲味噌製造所大正7年創業
神戸の長田で味噌造りを始め、戦後に蔵を芦屋へ移した造り手です。兵庫県産の米と丹波産黒大豆を使い、粒の残る甘みのある味噌を仕込みます。
この土地を掘り下げた読みもの


